【日刊レビュー】「プライベート・ライアン以来の最高傑作らしい」ブリッジ・オブ・スパイ
「プライベート・ライアン以降でスプルバーグの最高傑作だ!!」と前評判をかっ飛ばしてるブリッジ・オブ・スパイを鑑賞。
毎月十日の千円で映画が観れる日ということで本作と傷物語とクリードの3作を半日かけて劇場マラソン。そのトップバッターの本作から号泣、皆号泣。啜り泣きすぎ。
ちなみにスパイ映画といっても、アクションシーンもなければ美女も出てこないし秘密兵器もない。
おまけにスパイである張本人は「スパイ?なんのことです?」ととぼけっぱなしで認めない。
「スパイが自分をスパイとして自己紹介するわけねぇだろ」という実話ベースの世界観が実に地味にインパクト抜群。本作の全編に漂う「捕まってスパイと認めれば拷問されて死ぬのが当たり前」という緊張感の土台になっています。
ちなみに出てくるスパイはこの画像真ん中のとっぽいおっさん一人だけ。右にいるのが主人公のトム・ハンクス、彼の仕事は弁護士さん。
FBIの懸命な捜査活動でやっと逮捕したしょぼいおっさん(=は見せかけで、本当は凄腕のスパイのはずだ!!)を正当に逮捕する上で、ちゃんと国選弁護人をつけるってところでトム・ハンクスがご指名されるという流れ。
弁護人になってしまったトム・ハンクスはオウム裁判の弁護士のごとく冷ややかな目で見られ続ける逆境になってしまうが、、、って流れ。その先は語らぬ方がいいかと思いますのであらすじは本当に序章のこの辺までで。
ちなみに話は冷戦まっただ中の1957年。核戦争の脅威に誰もが怯える中、敵国(=ソ連)への嫌悪感を誰もが丸出しにする時代を描いています。
なんといってもこの話題作の基盤にあるのはシナリオがコーエン兄弟(まさに傑作脚本量産マシーン。ファーゴやノーカントリーもお勧め)、監督はスピルバーグ、主役がハンクス、そしてアクションシーンや派手なVFXは一切なしの、究極の職人映画。
セットが完璧。衣装が完璧。エキストラ・モブが完璧。まさに舞台の1957年に最新のカメラを持ってって撮ってきたんじゃないかと見まごう完璧な空気感でタイムスリップしたような時代劇体験。職人芸ここに極まれり。
「完璧な仕事は目を奪う」を実証するようなオープニングから一気に作品の世界にダイブされられ、劇場に足を運んだ至福が3秒で訪れる思い。
とかく関心させられ感動させていただけたことを書くときりがない本作。
コーエン兄弟・スピルバーグ・ハンクスの妖刀のような切れ味を思いだすたびに唸ります。