あなたを必要とする理由・グラフィッカー募集の超補足

先日に引き続き新スタジオでのスタッフ募集FAQシリーズ、今日はグラフィック編です。

しかし、グラフィックさんって呼び方いろいろですよね。企画もいろいろでしたが。

  • グラフィッカー
  • デザイナー
  • アーティスト
  • モデラー
  • アニメーター
  • キャラデザ
  • エフェクト
  • UI
  • 背景画
  • 絵師

っと、読み上げればキリがないのでざっくり「絵描き」「グラフィック」と呼ぶことが自分的には多いです。


しかし、各分野の経験者さんから言えば「おいおい、グラフィック募集って言うけど、いったいどんな分野の人材が欲しいんだい?」って話でもありますよね。


募集する側から言えば3D・2Dなどの作品サンプルを送っていただいて、これから作ろうとしてるゲームに是非この絵を入れたい!!採用だーー!!、という流れが望ましいのですが、もう少し方向性がわからないと、このスタジオで働きたいのかどうかもわかりにくいと思うので、今日は方向性の話をしたいと思います。



これまでの作品の方向性

これまで(株)ゼペットは社員のいない個人会社で、私が個人でモックアップを作り、絵もおおざっぱな原型を作った後に、グラフィックのプロの知人に委託して高いレベルの絵で作り直してもらうという手法をとってきました。

ちなみに私は絵はあんまり旨くないのですが、映像編集は昔から超やってて、これも私の編集だったりします。


(ポケベガについては公式サイト見れば、スクショもたくさんあるので分かりやすいと思います)

iYamatoとポケットベガス、この二つを例で言えば、iPhoneという超絶に大量のゲームが出る中、パッと見でユーザーの心に引っかかるモノがないと速攻で埋もれてしまうので、絵的に主題となるもの(iYamatoなら大和、ポケットベガスなら宇宙と地球)を決め、そこからプロの人が、ユーザーの心に深々と刺さるようにクオリティを磨きまくってもらう、という手法でやっています。



長所と短所

私が最初にゲームの原型を作り、各グラフィック担当者が磨いてく手法の長所として、「描いて絵を組み合わせてゲームにして見たら全然合わなくて1から企画のやり直し」といった一番がっくりくるパターンは無くなり、方向性の主題も明確なので、絵的な提案を暗中模索するリスクも激減できたと思います。

これまで、iPhoneゲームって比較的低予算な割に、確実にユーザーに刺さるものにしなければならない、という意識が強かったので、この手法は割と必然なものでした。

しかし、欠点がないわけではありません。

一番の問題はグラフィックサイドの提案を入れにくい流れになりがちと思いました。

なにせ、私が原型を作り、それを描き直してもらってお金を払うという仕組みなので、必然、全然別の提案をする行程がないんですよね。

また、これまではスタジオが無く、各自の作業場で仕事をするので、雑談でアイディアを出し合うということも少な目なものでした。


欠点克服に向けて

っというわけで、新スタジオでは皆がアイディアを出し合える行程=雑談が面白くできるよう休憩スペースにはかなりこだわってます。

12畳の巨大和室がそのために割り当てられてるのですが、現在、続々と備品が搬入されてて、先日もドア並にでかい3Dテレビが入って来ました。

管理された進行も大事ですが、皆で会議室でネタだしするより、こうした部屋で同じもの見て笑ってアイディアの練りが深まるのって同じくらい大事と思うわけです。

ゲーム開発の現場ってプログラマ・デザイナ・企画で机も分かれてしまって、悪くすると職種間を超えて話すことも少なくなって、そうなると比例して自分の専門以外に関わるアイディアを出そうという気分も減ってく、そんなこともあると思います。

しかし、新スタジオは規模的にも設備的にも、ちょうど良い感じじゃないかと思ってて、「もっと意見を出してゲーム作ってきたいぜ!!」なグラフィックの人にはかなり、水を得た魚的に働いてもらえるのでは、、と私的には画策している所です。



どれだけデザイナーが大事か

新スタジオを作るということは、これから働くスタッフをもてなす心が大事なわけで、必然、選ぶ機材ももてなしの気持ちに恥じない一級のものを用意しまくってる今日この頃です。

特に、映像系のプログラマとグラフィックってお互いに尊重、もてなし合う心が死ぬほど大事なんですよね。
(一応、私は属性的にはプログラマ・・・コード書いてるより書類書く方が多いかもだけど。。)


特に、私がどれほどデザイナーを大事かと思ってるかを語る上で、スクウェアに在籍してた時代の恩人的なグラフィックの方々との仕事は外せない思い出です。

ほぼ余談でもありますが、デザイナがどれほど大事かを語るエピソードとして、ちょっと昔話を。



人生最大のピンチと人生最高の出世作

今でこそいろいろヒットを出してたり、社長という肩書きがあったり、資金を運用して社員を募集して次なるヒットを目指すぜ!、な、ゲーム・クリエーターライフを満喫(悪く言えば忙殺)ですが、そんな私も「人生オワタ\(^o^)/」と思わざるを得ない暗黒の時期がありました。

私の経歴的には、個人的にはあまり嬉しくないのですがFinal Fantasy XIでメインプログラマだったことで「すげぇ!」的に言ってもらえることがあるのですが、嬉しくない理由としは、古い話だし、いろんなタイプの人が大勢いるプロジェクトの真ん中って大変なので、必然、良い思い出とは言い難い複雑な気持ちもいろいろあるのですが、やはりスクウェアに勤めた上でFFやったってのは少なからず自慢な話でもあるのは事実なのですが。。

そんな大役をいただく一個前のゲーム(クロノクロス)では、完全に詰み!というピンチを迎えて、退職もやむなしという状態だったりしました。

どんなピンチだったかと言うと、スタッフの割り当てが悪く「どう考えても自分で絵を描いた方がマシ」というグラフィックさんがチームに割り当てられ、随分と大変な思いをした思い出があります。

最終的には世に出たように、PS世代でも最高レベルのグラフィックになったのですが、プロジェクト終盤までは「同人レベルすぎる」という酷評を一身に浴びる羽目になった、暗黒のプロジェクトでした。

無論、全てのグラフィックさんが悪いわけでもなく、ずば抜けた人も多くいたプロジェクトだったのですが、この時、私は3Dグラフィックのアーキテクチャなどを担当してたのですが、特に担当してたエフェクト分野のグラフィックさんが、どうも心身ともに病んでしまった時期で上がるモノの質が著しく悪く、また、当時はエフェクトで作り出す映像次第で作品の3D技術の善し悪しを見られる時代でもあって、私の評価も清々しいほどに最悪でした(いろいろ悪いことが重なって初任給から一切給料も上がらなかったのも未だに定番の愚痴です)

そこで、クロノクロスでは、プロジェクトの半分の期間でプログラム関係を完了し、残りの期間で絵を描くという算段で進めることになるのですが(完全に同人のノリ)絵に集中出来ない、プログラムに集中してた時期に描く私の絵は輪をかけて悪く、「同人でもこんな酷いの無い」と言われながら、どんだけ不遇なことしてるのかわかってんのかてめぇ!な感じでやさぐれまくってもいました。


超効率化と統合システム

実際のところ、「そんな状況なら普通辞めるだろ」でも辞めずにいたのは当時は3Dゲーム時代の幕開けで(プレステ出た直後)、技術の進歩を作ってもっと凄いモノを見てみたいという欲求がとても強かったという理由が一つ。

もう一つは、今でこそ有名ですがQuakeUnrealというゲームが出てたのもこの時代で、彼らも私同様、超個人レベルながらとんでもねぇゲームを作ってるというのを見て、自分も個人だからといってあきらめる気にはならなかったというか、「このままじゃいつか欧米に負ける!」という焦りも大きかった時でもありました(今や既に結果が出た感じでもありますが、この時はまだまだ負けねぇと思ってたんですよ)

会社自体は大きくなりつつあったなかで、クロノトリガーという超名作の続編でそこまで孤独ってのも変な話ですが、おそらく、Unreal作ったティムもQuakeのカーマックも、ぶち当たるのは効率の壁で、チームの大小関係なく、充実した深みと、たっぷり味わえるボリュームを作れる、環境の構築が大きな命題でした。

そこで、当時は珍しい、というか、他で作ってるのは聞いたことがないような統合環境を作り、カメラもライトもキャラ(キャラのアニメとかはインポート)もエフェクトも同時に編集できる状態にして、「おし、こっから先はグラフィックに集中だ!!」とざっくざっくと作り始めたのでした。


プロの壁

そうして作ったモノは最終的には「え、これ次世代機じゃないの??」と言われるほど凄いものが量産されるようになるエンジンだったのですが、なにせ自分で用意した素材で動かしてる時は、「え、動きは凄いけど、なんか、、、微妙・・・」という感想ばかりで、変な話、グラフィックの増援はないけど、プログラマはいたので「プログラムだけでも増援すれば?」とか言い出されたりして、実際のところ、もしプログラマが増援されたら、当時は結構ぶっちぎりなレベルで実装してたので理解レベルが合わず無用なお荷物になるか、自分のレベルで仕事をされて(=全体のレベルが下がる)それに見かねて私がキレて退職するかっていう、誰も得しない不毛な話ばかりが持ち上がりました。
(※随分と高飛車で恐縮ですが、当時は3Dは先端技術で、誰でも出来るというモノではなかったのです)

当たり前なのですが、欲しかったのはデザイナーだったのです(^^;

それでも、徹夜の連続で絵からプログラムから用意して微妙なレベルのゲームを作るという日が無情に続きました。


首の皮一枚での増援

そんな不遇の中、「どうやってもこのままでは間に合わない」という時期にさしかかると同時に、先行して発売したFF8のプロジェクトが終わったことで、そのスタッフを回してもらうという交渉を持ちかけることが出来ました。が、「ウチの一流スタッフをそんな弱小にはやれない」的なことを遠回しに言われる羽目になり、不遇さを満喫します(ウチのスタッフが欲しければXXちゃんの電話番号を聞いてこいと要求されるとか、弱みに存分につけ込まれました。ちなみに電話番号は聞いたのですが、彼氏がいるとのことでした)

そんな余談もありますが、マジで終わらなくてヤバイという状況に勝るものはなく、結局、開発期間のラスト2ヶ月限定として、その一流スタッフ達が来てくれることになります。

っが、最初はやはり、弱小チームなので、圧倒的に人員に余裕のあるFFチームに比べ、不自由なことになるのでは、という心配を増援スタッフ達がしてるのは聞かずともわかりました。


統合環境の衝撃

言うまでもなく、増援が決まってからというもの早く来てくれないかとそわそわしっぱなしで、いつ実際来て一緒に働いてくれるのか、日めくりカレンダーに毎日「あとXX時間!」と書き込みたいくらい、一分一秒を心待ちにしていました。

なにせ、それまで1年半も水一滴ない砂漠で井戸を掘るような仕事をしてましたし、グラフィックのプロがフォトショップでグラフィックを描いて一緒にゲームを作ってくれるなんて、冗談抜きで想像を絶する夢の環境とまで思うほどでした。

しかし、手前味噌ながら「夢の環境」という台詞は、弱小チームで働くのを心配してた一流グラフィックの人達がその後次々と漏らすようになっていきます。

増援スタッフの仕事始めの日、当然のようにいろいろと「あれはどうするの?」という質問が交わされるのですが、ほとんどの質問は「このツールにファイルを放り込めば編集画面に出てくるので、それを好きなところにおいてください」という答えで終わるもので、それまで、統合環境という文化がなく、必ず「カメラ担当」「ライト担当」「これはプログラマと相談」と細かく分業した人達と絵コンテなど起こしてから連携して作業をしてくのに慣れてた彼らは、一人で仕事が完結することのストレス軽減と、何度も調整できるやりやすさでのクオリティアップに、それまでFFチームでやってたより圧倒的少人数・圧倒的短期間で圧倒的なクオリティになっていくことに驚いてた感じでした。


用意した私としても、言うなれば一度もサーキットを一周回ったことがないF-1マシンをずっと作ってたようなもので、クビになる直前、初めてプロが乗って一周回ってくれたら、あまりの好タイムで失神してしまったような話で、一夜にしてクビの心配もしなくて済むようになった衝撃の日となりました。
(※実際のところ、クビってことはないと思うのですが、あの汚い絵のまま発売してたら恥ずかしくてクビつってたかも知れません)

当初はプロジェクト末期の短期の助っ人だった増援スタッフ達も、それまでと一線を画すものが出来ていくことに夢中になってくれたのか、あれこれと追加注文をしてくれるようになり、私もそれまでの孤独が吹き飛ぶ勢いでいろいろなアイディアをその日のウチに実現できるように、躍起になって実装してきました(プログラムに純粋に集中できたあの幸せは忘れられないですね)


結局、増援スタッフ達との仕事は一ヶ月延長されて3ヶ月ほどだったのですが、その短期間で全てのモノが塗り替えられ、「PS世代最高のグラフィック」と言われるまでになり、他チームへのエンジンの提供の相談が持ち上がったり、しまいには増援された一流スタッフ達が「ココで働くのがベスト」と漏らし初めてくれた延長か、「じゃぁ、このチームでFF作ればいいじゃん」の空気になったのか、クロノクロスチームはFinalFantasy XIの母体となっていったのでした。


そんな調子で作ったクロノクロスはこちら。今見ると、とてもメインメモリ2Mでやるレベルじゃねぇと自分的に思ったりします。

誰にも教えてない裏話ですが、実はラスボスが感動的に死ぬシーンが作られたあと、編集データがなんかの拍子で消える事件があり、プロジェクトの最後の最後で皆グロッキーだったので、記憶を便りに私が人知れず作り直してぶち込みました。
(2分20秒あたり)

余談ですが、この一個前に作ったXenogeasのラスボスが死ぬシーンは、完成直前になって誰も作ってないことが発覚し、締め切り前日、これも徹夜で人知れず1から作ってぶち込みました。
自分的にはそこそこの出来じゃない?と思ってたんですが、やっぱプロのアート担当の人のがよほどイイモノを作るとクロノクロスで知ることになります。(5分50秒あたり)

そんな苦労をしたあとのFinalFantasyXIでは、既にやり方も理解されてるし、人員不足で悩むこともなくなり、病的な作り込みをする人もどんどん増えて天候変化や時間変化など無限のバリエーションを用意したり、ホントに多くの人が使いこなしてくれています(今も使ってると聞くのでもう12年以上使われてる環境!)

スクウェア(今はスクエニ)を退職する時、そんなアーティストのとこによって「なんか作ってるとこ見せてくださいよ」とお願いしたら、飴細工のように3分くらいで派手なシーンを作ってくれたのはイイ思い出です。


まさに、人は見た目で判断する

長い話でしたが、今も使わてるFF11の長寿エンジンの元を作ったクロノクロスも、作ってる時は新しいシステム過ぎる割に絵が酷いことで「プログラマーの空まわり」のように言われるだけでしたが、前述の増援スタッフが来たことで「前代未聞のエンジン」と言われるまでになり、その違いって人生が変わるくらいといっても過言じゃないと思うんですよね。

長かったですが、とにもかくも絵が大事と痛感した、私にとって忘れられないエピソードです。



アート好きなプログラマ

そんわけで映像関係は随分やったのですが、当然、そういうの大好きでやってたわけで、総じてグラフィック系プログラマは私に言わせれば、筆の代わりにプログラムを使うアーティストみたいなモノだと思います。

とりわけ、プログラマがアートを追求するメガデモというのが大好きで、文化の元祖であるAmiga500を高校生ながらバイトして買って、当時の王者State of the artを死ぬほど繰り返しみてました。

(700kbのディスクをブートした瞬間に音楽が鳴りだしてダンスが始まるクールさは電撃的な衝撃)

20年前はフロッピー1枚でどんだけ表現が出来るかを競ってましたが、3Dシーンが計算で作れる現代ではファイルサイズ4k以下で音楽もグラフィックも生成して作る世界が流行ってます。

どちらも「おまえドンだけコンピュータの中にアートを見いだしてるんだよ」と突っ込まざるを得ない世界観を持ってますが、大事なのは、そういう追求心を持ってるプログラマとアーティストが出会うことに他なりません。

この手プログラマは常に、今あるマシンの可能性はまだまだ引き出せておらず、爆発的にそれまでの常識を超越した芸術があるハズだと思うように出来てるのですが、一言で言うととんでもない奴で、そのとんでもなさと同じ歩幅で歩けるプログラマとデザイナが合流した時の面白さったらハンパじゃないんですよね。


前述の通り、私は何年も良いデザイナーとの縁がなく飢えと苦しみの時代をさまよいましたが、そんな私と同様、素晴らしい絵の才能を持っていても、それをぶつけるプログラマーに出会えてない人もいると思います。


実は、募集的にはプログラマの方が早くに集まりつつあるのですが、募集時に提出してもらってる課題を見る上で、これはデザイナにもかなりのチャンスになりつつあるな、と唸らざるを得ない勢いを感じ始めています。


鬼に金棒

新スタジオでの募集を初めて2週間、既に「いずれ彼らはUnityの鬼になる」と思わせられる応募作がいくつかあり、私自身も来年は新しい次元での仕事が出来ると思い、非常にわくわくしています。
(応募作のレベルの高さを言うと、応募しようと思ってる人へのハードルを上げてしまうので言わないようにしてたのですが、、割と第一募集での定員間近で、かつ、レベルも高くなってしまったなぁ。。。と思います)

そんな彼らが、以前の私と同様、グラフィックの人員不足で力を出し切れない、という状況にするわけにはいかないという思いも強く、今回の補足を書きました。

特に今のようにUnityやUnrealなど、世界中の人が平等の武器を持ってる現代って、ある意味、鬼のように強くなる人と出会えるかが全てといっても過言ではないと思います。


そして、ここまで読んで「ぬぬ!?」と思うデザイナーの方は、自分の作品を何枚かZipに詰め込んで


geppetto.recruit@gmail.com


に是非メールしてください。詳しいことはコチラ

小さなスタジオなので、特定分野に特化した仕事というよりは、出来そうなものはいろいろとやってもらうと思いますが、既に集まってるメンツもUnityをベースに、なんでもやれる人が集ってるので、技術とアートの境目緩く、いろいろ楽しく話し合えるのではと思いますし、お互いに教えあえる仲間になってくれればと思います。

新スタジオでのプログラマ・デザイナの出会いで、かつての私のように、多くの人が良い方向へ変わるような仕事が出来る機会になることを願っています。

我々と共に、ベストiPhoneゲームを塗り替えましょう。