今の温泉はすげぇことになってる
「今の温泉はすげぇことになってる」というと「え、寂れてるの?」ってのが素の反応じゃないかと思いますが、いやいやどうして、「凄い寂れて凄い進化してる」という実体験をちょっとしてきました。
私は塩原温泉にしょっちゅう行っていて、必ず行く鍋屋があるのですが、常連として認定いただいてるのかおばちゃんが地元ニュースでX丁目のYさんの長男が事故起こしたとかの、どローカルニュースを聞くのもしょっちゅうなのですが。
先日行った際はやっぱり震災の話でXXがZZになった系の話がたくさんあったのは当然なのですが、結論から言うと大手の宿泊施設が大打撃というかドミノ倒し的に倒産という勢い。
とかく観光事業には若者のXX離れ(スキー・車・グルメ)だのガソリン価格の高騰・高速料金の割引終了だの不況だのそりゃぁまぁたくさんの逆風が吹いていましたが、やはりトドメなのは震災。
風評うんぬん以前に3〜5月まで計画停電で予約が入っても「停電でサービスができないかも」とお断りをせざるを得ず、従業員を確保したままにも出来ず苦汁の閉鎖で、街の真ん中に鎮座するでかいホテルが並べて閉館状態という。。
「みんな四の五の言ってられないから、働ける場所を探しに関西でも沖縄でも離島でも行くしかないだんべぇ」というおばちゃんの言葉と裏腹に「でも、この周辺の宿、たくさんの車が止まって、凄い流行ってるように見えますよ?」という感じで、大手が潰れて家族経営レベルの宿に客が集中してるという、ちょっと新しい現象にも、その時ちょっと気づきました。
ちなみにこの鍋屋は行き着け初めて早15年くらい。初めて行った時からおばちゃん一人でやってて、60歳前後じゃないのって感じなんですが、今は下手したら70後半??って思うこともあるけど、休日無しで数十年休んだ事がないのに、震災と停電で初めて休んだそうです。
材料は全て地産地消というか、いわゆる農家の「自分用」に生産した別格のモノしかない、というかスーパーに行ったことあるのか?という次元の品で、ゴチバトルとかで見るようなものが、「都会の値段じゃねぇからよぉ」って安さで喰える店。毎年、おばちゃんがぽっくり逝ってないかどきどき心配しながら顔を出しにいってます。
グルメサイトにも載ってない、こうした店に温泉がてら行くってのは小粋な感じで好きなんすが、塩原の賑わいが停電と大手の閉鎖でちょっと陰ったかな、、と、、一瞬心配ではあったのですが、逆にこのお店やその近所の小さい旅館は賑わいでたので、この機会に今まで知られてなかったクオリティをいろんな人に体験してもらえば、筋金入りの温泉ファンが増えていいのでは、っと思いました。
ちなみにこんときは日光東照宮・おばちゃんちで鍋・キャンプ場で車中泊・那須アウトレット・千本松牧場と一泊二日で結構遊んできました。
そんな、温泉が廃れるって寂しいなぁ、、と思ってる矢先に、ゲーム業界の人なら愛読してないはずがない、鈴木みそ先生のマンガで「限界集落温泉」なるものをAmazonのお勧めで知り、出てるぶんだけ大人買いしました。っとはいえまだ3巻までですが。
- 作者: 鈴木みそ
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帯書きがホリエモンの
「ITおたくエンタメ業界と温泉再生という一見関係なさそうなテーマを無理矢理繋げて面白い作品にしているという鈴木みそならではの作品」
ということで、まぁ、この不況で失業の話が盛んな中、鈴木みそのいろいろなアイディアで「こーすりゃいいじゃん」な金太郎的マンガかなぁ、という予想をしつつ、面白いと言われたものを避けてはいけないという家訓を掲げてるのでイッキ読み。
中身は全く予想ガイに生きた含蓄、かつ、面白おかしい人間心理かつ、おたくの願望、習性を貫いた作品で、鈴木みその長年のクリエーターとの取材と付き合い&観察眼から生まれたファンタジーにげらげら笑いつつ、こらもっと広まるべきと思った次第。
温泉もエンタメ業界も、本来は自慢のサービスを掲げてお客を呼ぶのが本分でも、その業界にいる人としては、長年勤めてると自慢の種がキャリアの長さだったり有名どころとの絡みだったり変な権力構造だったりって割合が増えたりしがらみが出たりで質が低下したり疲れて辞めちゃったりと。。
マンガでは、そんなちょっとクタビれた人が寂れた温泉旅館に再生の助力をする様が中心ですが、まぁ、やってること(客のためのネタ作り、心のくすぐり方)は本来一緒だし、人間再生ものってのも面白いし、なにより自分もなんとかならないかと思う問題に、覚えのある人種が行動をする様と、主な動機がやっぱ女ってのも単刀直入で分かり安いと。
「将来どうなっちゃうのかしら?」と思わないはずがない業界人には是非お勧めw 本分さえ忘れなければ案外いろんな飯の食い方があるのかも知れないっすよ。
実はこっからが本題なのですが(↑前振りっす)先日行った宿で「今の温泉はすげぇことになってる」とびびらざるを得ない体験をして、前述の話の方向性がすっきり見えた気がしました。
お邪魔した宿は長野の山奥のオーベルジュ・セラヴィというところで、変な話ですが、私、幼少の頃にこの宿に里子というか親の都合で夏・冬に一月弱も預かってもらってた経験があり、今回はリニューアルされたとのことで実に30年ぶりに行ってきた次第です。
いやぁ30年前にお世話になってたオーナーのおばさんに会いに行くってどこのバック・トゥ・ザ・フューチャーかって感じで、幼少の頃は美人オーナーと呼ばれたおばさんもさすがに還暦だろうし、なんつっても宿も改装してるとはいえ30周年なんてこの不況下でどうなってるのだろう・・・
っとドキドキしながら行ったのですが、、、
つくやいなや「あれ、ホントにここですか??」とパっと見で困惑。
右のサンダードームみたいなものやそびえる塔みたいな部屋とか、ありましたっけ???
っていうか2階建て+屋根裏部屋だけだった気が・・・
というか入ってみて100倍びっくり
ホントはこの部屋とは別の部屋に泊まったんですが(山がよく見えてるのでこっちを拝借)「な、な、な、な、なんなんすかこの馬鹿デカイ窓!?」って感じで全室が空中に浮いてるような勢いに演出されてたり。
私が泊まった部屋はロフトに天窓まであって子供も犬(ペットオッケーなのはありがたい!)も大喜び。
お風呂は貸し切りが4つもあって、どこもまた異常な絶景。まぁ、こういうベタなのもなんですが吸い込まれそうっすよ。
飯はサンダードームみたいな別館でフレンチ。やはりこちらも空中庭園的な感じ。そりゃワインも進むというか、料理もマジで旨かったです。朝食も凝ってて素晴らしい。もうここに来て一泊したらそれで満足、満腹という素晴らしい体験をさせてくれる、凄い宿になってました。
っていうか上の写真のどれも30年前はなかったモノでした。
むしろ、30年前と言えば「私をスキーに連れてって」なバブル真っ盛りでおしゃれなペンションは予約でいっぱい・・・から、不況になったり、若者のXX離れとかいう波も来たりでしたが。
まさか、そうしたネガティブな要素を全部吹き飛ばす勢いでこんなぶったまげる仕掛けを山盛り備えた宿に変身してるなんて全くの予想外。
さらに言えば、オーナーのおばさん以外はバイトのスタッフなのかな。共同の経営の方がいるかしらないのですが、おばさんがここまで勝負されてるとは感服。
しかし、おばさんから見ればやっかいな預かりもののちびだった私なので、「いやぁ、マジ凄かったっす」と言うしかなく宿を後にしました。
かみさんは「絶対また来たい、来週行きたい」くらいに新次元の温泉体験に一発でハマってて、サービス業の本質を見た気がしてなりません。
ちなみにお部屋は1万6千円から。昔は大手の温泉旅館に2万ちかく払って行ってたのを考えるとばかばかしいことしかり。
しかし、かつてのブームで大資本の大型施設はたくさん出来て、今では軒並みそれらが廃墟になった中に凛然と輝くおばさんのペンションとその賑わいには、なんとなしに、ブームに表面上のっかったってものはどんどん廃れて、背骨の入ったものはどんどん研ぎ澄まされていくという、他業界でも顕著に見れる傾向を体感した思いもあると同時に、こんな凄い宿が他にもあるんじゃないかと思うと、わくわくしたぜって話でもありました。
隠れ温泉マニアとして昨今の事を書いたら異様に長かったですが、ここまで読んで「たまには旅行でも」と思ったらオーベルジュ・セラヴィにこの夏行ってみることはマジでお勧め。周囲もいろいろ面白いですしね。
好きなモノが廃れるのは寂しいですが、むしろ冴えた本質が再生するのも喜ばしい潮流。これからもいろいろなとこに脚を運びたいと思います。