不沈艦を沈ませる難易度調整(iYamatoメイキング)

メイキング第二回 難易度調整とかQAとか



やっと完成した!審査へsubmit!お疲れ様!

という瞬間は締め切りに設定した日付をほどよく超え、開発末期を避けて組んでいた人と会うスケジュールでぎっしりの日々が始まる午前11時。

その日は久しく会う中学時代の同級生が独立したということで、せっかくなのでビジネス話半分、つもる話半分のランチの約束があったのですが、「さっきまでこんなゲーム作ってたんだよー」と完成したばかりのiYamatoを渡すと、いきなり30分ぶっつづけでプレイされ「終わらないんだけど」と言い放たなられてしまいました。

その男、クラスの中でも悪魔城ドラキュラスーパーマリオ2をいち早くクリアした男であるが、社会人になったらばりばりのやり手で独立もして社長という感じだったので、やや「接待モード」的な話かと思いきや今だに勘があるみたいで、「最近はゲームやってない」という人でも、一皮剥けば獣のような男がこの国にはごろごろいると思わされる出来事。

当然、そのバージョンでも自分も何回もやって、死に頃は調整してたつもりなんだけど、作り手じゃないとわからない攻略のポイントはそうそうわからないだろうと思いきや、初プレイで看破されてしまいました。
そんな彼は発売前にずっと1位だったんだけど、発売後もハードで世界ベスト10入りしてるなど、なんか、ずっとスペイン勢がトップだったりしたのをみて世の中でかい、と思ったけどけど狭い


(9位のOka氏が同級生)

とにかく「終わらない」と感じるほど長いプレイ時間はこのゲームでは致命的で(ハイスコアを出すモチベーションが失せる)、かつ誰でも数分は「不沈艦」気分で遊べる、という調整が命。
ランチの後は速攻家にもどって、難易度曲線(どの辺からどんくらい難しいか)の見直し。「どんなニュータイプもどんとこいの難攻不落」を「不沈艦」を売りにしてるゲームなのに、確実に設定しなければならないという微妙なライン。
「おし!これなら大丈夫!」というのを何度も完徹あけでさらに調整し、他の予定をキャンセルさせてもらいつつ夕方に再提出、そしてバタンQ!

その翌日は京都の精華大学の講義に備え前のり、「やっと終わったんですよ〜」と解放宣言をしてグビっと飲んでぐっすり就寝。

大学へ講義へ向かう道中、講師をご一緒してる猿楽庁の代表・橋本長官、Newtonicaの作者・西健一氏にプレイしてもらうも、その時点では初プレイ時のチュートリアルは文字での説明だけで、どうもそれが伝わらず、想定外の操作をされることに。

なんといっても猿楽庁の橋本長官はゲームのチューニングを請け負うプロの頭。

その場でするどく、文字だけの説明でわからない、という認めたくないけど認めざるを得ない宣言を受けたり、「だったらこうすべき」というポイントの指摘もいくつかいただき、さらに言えばその翌日からWWDC(サンフランシスコ)なんだけど、その時点で徹夜と気合で解決パターンを選択。講義終了後、その場で一番手の映りの良さそうな男女の生徒の手を撮影し(おまけにカメラも借り物)自宅に戻ってチュートリアル画像を加工してゲーム開始路に挿入し、アニメーションのタイミングを飛行機の時間ぎりぎり(ホント、搭乗口が閉まる直前まで)まで調整して再submit。

そしてWWDC(サンフランシスコ)では存分にカンファレンスだ!!というのと同時に、カンファレンスでお会いする方々へ手渡しでプレイをしてもらいつつ(その際、一切言葉による説明はしないで、チュートリアルメッセージだけでゲームが掴めるかを淡々と観察)。。。

ある意味、後追い的にテストをしてる中、なんとiYamatoがリジェクト。理由は「iPod touchでのプレイ時に振動のon/offの表記があるのはNG」とのこと。
不幸中の幸いとしては、、、テストプレイで、ボタンを連射してしまう方が20人中3人くらいいて、チュートリアルメッセージに「押しっぱなし」という表記をする必要があることが判明。

せっかくなのでチュートリアルメッセージを修正して再提出。ということをWWDC期間中のランチの合間でやってしまう。

AppStoreを見ててとかく思うのが「わからないので★一つ」という意見がいろんなゲームで散見し、ある意味私もいろんなゲームをやって、115円という価格で買ったゲームだし、わからなければ辞めればいいや、という気持ちも多分にあるので、とにかくテストプレイで「わからない」といわれることを最小限のメッセージで撃滅することが目標だったので、完全に初プレイのテストプレイヤー(≒カンファレンスの参加者)が山ほどいる場にいたのが非常に幸いでした。

そうして世界中の人の初見プレイという貴重なテストを得て「これなら、ほぼ!全ての人がすんなりプレイできる!と思う!」というところまで調整したバージョンを提出出来たので、あとはOS3.0の新機能を吟味しながら東京へ!という飛行機の中で。。。。

なんと、帰りの飛行機の中、自分でやって30分以上終わらないという悪夢のような自体に。この時点で、自らまさかのニュータイプ覚醒。

これは岡山君(前述の同級生)がやっても終わらない可能性、アリ、というか自分よりうまいプレイヤーなんぞ腐る程いるよなぁ、、、

っということで最後の調整「もうコレならどんなに覚醒していても絶対死ぬ!」という局所を挿入。そしてテストプレイ。

家までの帰りの電車でMacBook片手に最新ビルドを作りながら、家に帰るまでに本気プレイで10回はゲームオーバーを目標にまさに命がけ(ちゃんと死ねるかのテストなんだけど)のバランス調整。

そして帰宅次第、最後の正直のSubmit!そしてバタンQ!という感じで調整しきりました。

最後まで、岡山君がちゃんと死ねるレベルの難易度なのか不安でしたが、結果的には彼は国際レベルで7位(国内では2位まで行ったそうで)にとどまってくれ、無事に世界のプレイヤーが、「終わらない・つまらない」ではなく「狂った激戦」の中で真っ白になってくれるレベルになったんじゃないかと思います。

とかくゲームとしてのQA(体験クオリティの確保)でしくじると、せっかくの苦労が台無しになるので、少しでも隙を潰すためにQAの濃度をとにかく上げようとの挑戦で、内向的な開発段階とは真逆に出来る限りアグレッシブに挑みました。
そして正直に言えば、不安要素があったら発売日を延期してでも直すという決断もこの会社では初めて。しかし、冒頭で話したような難易度の詰めの甘さがあったまま出していたら、悔やんでも悔やみきれなかったと思います。

それでも今ではいろんな反省点があるのですが、これからも幅広く、いろんな人にご意見を伺いながら詰めていきたいと思います。